「銀河鉄道の夜/宮沢賢治」でとても好きな一説があります。
とてもステキな文章なので、ぜひ読んでください。
↓以下、銀河鉄道の夜より
「蠍(サソリ)って虫だろう。」
「ええ、蠍は虫よ。だけどいい虫だわ。」
「蠍いい虫じゃないよ。僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあって、それでさされると死ぬって先生がいったよ。」
「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さんがこういったのよ。むかしのバルドラの野原に一ぴきの蠍がいて小さな虫やなんか殺してたべて生きていたんですって。するとある日いたちに見つかって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命逃げて逃げたけどとうとういたちに押さえられそうになったわ、そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ、もうどうしてもあがれないでさそりは溺れはじめたのよ。そのときさそりはこういってお祈りしたというの、ああ、わたしはいままでいくつものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちにくれてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに、どうか神さま。私の心をごらんください、こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸せのために私のからだをおつかいください。っていったというの。そしたらいつか蠍はじぶんのからだがまっ赤な美しい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たって。いまでも燃えているってお父さんがおっしゃったわ。ほんとうにあの火それだわ。」
Mary

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